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甲府地方裁判所 昭和60年(わ)237号 判決

本籍

山梨県甲府市大手三丁目二番

住居

同市大手三丁目二番三九号

飲食業

松井正邦

昭和一三年一月二八日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官渡邊康出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金一、六〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金四万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、山梨県中巨摩郡竜王町冨竹新田二、〇二五番地の四ほか五箇所において、「札幌ラーメンどさん子」などの名称で飲食業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどして架空名義で預金するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  昭和五六年分の実際総所得金額が五四、一四二、九七八円あったのに、昭和五七年三月一一日、甲府市丸ノ内一丁目一一番六号所在の所轄甲府税務署において、同税務署長に対し、昭和五六年分の総所得金額が一九、二五七、五二一円でこれに対する所得税額が六、一〇五、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(昭和六〇年押第六八号の一)を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額二六、四四七、二〇〇円と右申告税額との差額二〇、三四一、七〇〇円を免れ

第二  昭和五七年分の実際総所得金額が四八、五七四、九九六円あったのに、昭和五八年三月一五日、前記甲府税務署において、同税務署長に対し、昭和五七年分の総所得金額が一九、七五〇万四六〇円でこれに対する所得税額が六、三四八、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(同号の三)を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額二二、七二二、五〇〇円と右申告税額との差額一六、三七四、五〇〇円を免れ

第三  昭和五八年分の実際総所得金額が四二、〇八八、〇〇三円あったのに、昭和五九年三月一〇日、前記甲府税務署において、同税務署長に対し、昭和五八年分の総所得金額が一七、〇〇九万一一四円でこれに対する所得税額が四、九四九、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(同号の五)を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額一八、八六二、〇〇〇円と右申告税額との差額一三、九一三、〇〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

1  被告人の当公判廷における供述

2  被告人の検察官に対する供述調書三通

3  窪田直也及び田中哲夫の検察官に対する各供述調書

4  大蔵事務官作成の売上、期首商品たな卸高、仕入、租税公課、水道光熱費、広告宣伝費、接待交際費、修繕費、消耗品費、燃料費、福利厚生費、車輌費、諸会費、損害保険料、支払手数料、雑費、雑損、給料賃金、雑給、退職金、支払利息割引料、地代家賃、減価償却費、繰延資産償却費、青色専従者給与、青色申告控除額及び事業専従者控除各調査書

5  甲府税務署長作成の証明書

判示冒頭の事実について

6  検察官作成の報告書

判示第一及び第二の事実について

7  大蔵事務官作成の期末商品たな卸高、事務用品費、預金利子、譲渡収入、譲渡原価及び譲渡所得控除額各調査書

判示第一の事実について

8  大蔵事務官作成の通信費及び譲渡費用各調査書

9  押収してある昭和五六年分所得税確定申告書一通(昭和六〇年押第六八号の一)及び昭和五六年分所得税青色申告決算書一通(同号の二)

判示第二及び第三の事実について

10  大蔵事務官作成の不動産収入及び支払家賃各調査書

判示第二の事実について

11  押収してある昭和五七年分所得税確定申告書一通(同号の三)及び昭和五七年分所得青色申告決算書一通(同号の四)

判示第三の事実について

12  大蔵事務官作成の損害保険料調査書

13  押収してある昭和五八年分所得税確定申告書一通(同号の五)及び昭和五八年分所得青色申告決算書一通(同号の六)

(法令の適用)

被告人の判示第一ないし第三の所為は、いずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、それぞれ所定の懲役刑と罰金刑を併科し、それぞれ罰金刑について情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑について同法四七条本分、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑について同法四八条二項によりそれぞれ五〇〇万円をこえてその免れた所得税の額の罰金額を合算し、その刑期及び罰金額の範囲内で、被告人を懲役一〇月及び罰金一、六〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 上田耕生)

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